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November 23, 2008

古今伝授をめぐって

茶の湯ぶらり旅(第31回)

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先日、「世界の”茶”文化セミナー」に参加した。会場は「江久庵」(写真左)。高級カステラで有名な”お菓子屋さん”で、お店の2Fが多目的ホールになっている。大阪・堺市にある「履中天皇陵」の北側に位置する。南海電鉄・高野線「難波駅」から急行で約12~13分、「堺東駅」で下車し、東へ10分ほど歩くと会場に到着だ。地方都市にこのように立派なお店があったとは、と思わせるような店構え。店舗に足を踏み入れると、ショーケースが並ぶ。高級カステラや、茶道用の和菓子類などが陳列されていた。会場の2Fに行く通路には、各種マスコミから受けた取材の様子を表す写真パネルや、「南蛮人渡来図屏風」(写真中左)、「南蛮船の模型」(写真中右)、「北前船を描いた大皿」(写真右)などが展示されている。反対側には、菓子作りが見学できる工房が続く。少し進むと、明るく、清潔感あふれる感じのお茶処「利休」がある。ここで窓の外に広がる庭園を見ながら、抹茶や和菓子などを楽しむことが出来るのだ。

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庭園の右手を見ると、茶室が建っている。「朝雲庵」だ(写真左・中左 : 待合・中右 : 御庭・右 : 広間)。これは千利休が作った大阪屋敷の”御成の茶室”を復元したもので、「複元は、茶室研究の第一人者である中村昌生先生の監修により、利休の弟子・山上宗二が書き残した「利休大坂三畳台目茶室」の間取り図や当時の茶会記などの資料をもとに忠実に行われました」(「江久庵」案内書より)との事。庭園に出て、外からは茶室を自由に見ることが出来たので、拝見させて頂いた。茶室の特徴として、次のように書かれていたのでご紹介する。

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千利休(1522~91年)は、大阪城(1583年築城開始)の邸宅にあった大阪屋敷のほか、堺市にも茶室を作ったと伝えられていますが、現存するのは「待庵(たいあん)」(伝利休作)のみです。大阪屋敷の茶室は利休切腹後に取り崩されたと言われていますが、利休の弟子の山上宗二(やまのうえ そうじ)が間取りなどを文章で残しており、今日の茶室の原型にもなっています。「朝雲庵」は、この間取り図や当時の資料をもとに、忠実に再現しています。

~無駄を省き、緊張感を創り出す空間~
・深三畳台目(ふかさんじょうだいめ)の茶室(写真左・中)
 4畳ほどの空間に3畳の客室と1畳に満たない点前座、床の間
・亭主と客を隔てる「台目構え」と呼ばれる袖壁
・杉や木や土壁を使った「草庵風」と呼ばれるつくり
・明る過ぎず、ほのかな暗さを実現した窓の位置・大きさ
・「にじり口」と言われる、客が潜り入る出入口(写真中右)
なお、「朝雲庵」(写真右)という名は、当時のオリジナル名ではなく、「「朝」は日が昇り輝くという意。新しい施設が誕生したという喜びを表現しています。また、「雲」は利休にゆかりのある堺「集雲庵」からとり、音読みで「運」にも通じることで命名した」との事。

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会場が素晴らしかったので、本題からかなり離れてしまったが、今回催された「世界の”茶”文化セミナー」は第三回目である。これまで出席できなかった私は、初参加である。第一回目は6月14日(土)、大阪府立大学で角山栄・和歌山大学名誉教授の「茶(CHA)の心と文化」、第二回目は10月4日(土)、大阪府立大学で趙方任・首都大学東京非常勤講師の「日本と中国・茶文化の比較」が講演されたようだ。今回は、西田正宏・大阪府立大学人間社会学部准教授の「古今伝授をめぐって」である(写真)。何か茶の湯に関係があるのだろうと、「古今伝授」とは何なのかということを全く知らずに参加したので、興味津々であった。

今回の講演内容について、配られた資料の項目を挙げると次の通りである。

Ⅰ.なぜ世界のお茶セミナーで古今伝授の講演なのか
①牡丹花肖柏
②肖柏と茶の湯の関係について
③お茶(茶の湯)と伝受(伝授)は関係あるのか
Ⅱ.いわゆる堺伝授をめぐって
① 「古今伝授」とは何か
・広義の「古今伝授」
・狭義の「古今伝授」
② 堺伝授とは
③ 地下歌人から堺の住人への伝授(伝授の実際)
④ 二つの伝授(箱伝授と長雅からのさまざまな伝授)はどのような関係か?

まったく予備知識のないことを聴いたため、内容については消化不良状態であるが、私が理解したレベルでお話しすると、次の通りである。

「古今伝授」とは、「古今集」の講義(解釈の仕方)全般を指し、狭義には「東常縁(とうのつねより)」より「宗祇(そうぎ)」が受けた講義(特に秘伝の伝授)を始まりとし、以降、その説を宗祇が門弟に伝授したことを指す。そして宗祇から三条西実隆(さんじょうにしさねたか)・宗二に伝授されたものを「奈良伝授」、宗祇から牡丹花肖柏(ぼたんかしょうはく)に伝授されたものを「堺伝授」、実隆から細川幽斎を経て天皇家に伝授されたものを「御所伝授」と呼ぶ。「御所伝授」以外は、その実態が明らかでないという。

牡丹花肖柏(1443~1527年)は、室町時代中期の連歌師で、京の生まれ。北摂の地(池田)が戦乱の地となったため堺に移り、豪商紅屋喜平の世話になる。現在の三国が丘に庵(紅谷庵)を構え、和歌や連歌の指導を始めた。当時、裕福で経済力のあった自治都市・堺の商人達は、教養が豊かで文芸に親しむ者が多かったことから、彼らが弟子になり、また後援者となって、肖柏の文芸活動を支えたという。肖柏は、宗祇から「古今和歌集」などの講義(秘伝)を伝授された。先にお話しした通り、これが「堺伝授」である。

では、「古今伝授」と「茶の湯」との関係は、どのようなものなのであろうか。利休の弟子である山上宗二の「山上宗二記」には、この「肖柏」のことが書かれており、また「茶器名物集」など茶道伝書を見ると、その形態は、和歌の伝書を基にしで書かれた様子が窺われる。この点に両者の関係を見出す事が出来るのである。ちなみに、華道の伝書についても同様のことが言える。

「古今伝授」は、本来、口伝や切紙によって弟子に伝授されるのだが、やがて切紙などをまとめ、箱に入れ、封印をして伝授するという「箱伝授」が行われ、更には中身についての「伝授」を受けない、「箱」だけの「伝授」も行われるようになったという。箱を所有するだけの「古今伝授」は、江戸時代ぐらいまで続いたようだ。

以上が、私なりに理解した今回の講演の内容だが、何故「古今和歌集」などの解釈が「古今伝授」のように秘伝として扱われたのかなど、自宅に帰ってから考えてみると、分からないことばかりである。もう少し勉強してから、講師の方に質問したいと考えている。
なお、講師の方が、「近世古今伝授史の研究―地下篇―(新典社研究叢書116)[日下幸男著]」を参考文献として挙げておられたので、ご紹介しておく。

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続いて10分ほど、角山栄・和歌山大学名誉教授のお話があった(写真)。郡上八幡の大和町に「古今伝授の里フィールドミュージアム」という施設があり、「古今伝授」を観光資源にしているという。牡丹花肖柏に伝授された「堺伝授」のある堺市も、「古今伝授」の町として力を入れ、郡上八幡と提携するぐらいのことをしても良いのではないかとのご意見、なかなか説得力があったように思う。これでまた、訪ねたい場所が一つ増えてしまった。

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最後に、トルコ・チャイと「江久庵」のカステラが全員に配られ、演台ではトルコ・チャイの入れ方が実演された(写真左)。今回の講演会。定員は150名だったが、空席が見つからないぐらいの盛況ぶり(写真右)。大多数が60歳代以上の方ではないだろうか。皆さん勉強熱心であることに、あらためて驚かされた。

※理解不十分な状態で書いたため、誤りも多いと思うが、お許しいただきたい。

「江久庵」(EH製菓株式会社)のHP
http://www.kokyuan.jp
http://www.EH.com
西田正宏・大阪府立大学准教授のHP
http://www.human.osakafu-u.ac.jp/staff/blue/b_nishida_masahiro/index.html
角山栄・和歌山大学名誉教授に関するHP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%92%E5%B1%B1%E6%A0%84
古今伝授の里フィールドミュージアムのHP
http://www.gujo-tv.ne.jp/~kokin/


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