城塞都市「トロギール」
クロアチア・スロベニアの旅(第12回)
レストランを出て最初に向かったのは、旧市街の中心である「イヴァナパヴラ広場」である。建物の高い壁に挟まれた路地を歩く(写真)。おおよその方向だけを頼りに進むのだが、まるで迷路にはまったような気分だ。しかし何とかなるもの。2~3分歩くと、広場に出ることができた。
「イヴァン・パヴァオ・ドゥルギ広場」の周りには、「聖ロヴロ大聖堂」(写真左)や「市庁舎」(写真中)、「時計塔」と「ロッジア」(写真右)などが建っている。中でも「聖ロヴロ大聖堂」は、トロギールを代表する建築物だ。
「聖ロヴロ大聖堂」(写真)の建築は、13世紀初頭に始められたが、完成は17世紀である。この場所には、初期キリスト教時代の教会が建っていたが、1123年、サラセン人により征服された際に破壊された。しかしその後短期間で復興し、この大聖堂も建設されることになったのである。当初ロマネスク・ゴシック様式で建てられたが、15~16世紀にかけて、ヴエネチア風ゴシック様式の鐘楼が増築された。
ウィキペディア・フリー百科事典(聖ロヴロ大聖堂 [Trogir Cathedral : 英語版])
http://en.wikipedia.org/wiki/Cathedral_of_St._Lawrence,_Trogir
この大聖堂で最も注目されるのが、西側にある正面入り口のロマネスク様式の門である(写真)。1240年、ダルマチア出身の巨匠で、ヴェネチアのサン・マルコ寺院の玄関のレリーフにも携わった、当時トップクラスの彫刻家「ラドヴァン」により制作されたのだ。
「門は上部と下部の二つの部分に分けられ、下部にはヴェネチアのシンボルであるライオン(写真左)の上にアダム(写真右)とイブ(写真下左)の彫刻、諸聖人や季節の移り変わりを表現したレリーフなどが施され、上部の半円形のレリーフにはキリストの誕生や東方三博士の礼拝などキリストの生涯が表現されている(写真下右)」(「旅名人ブックス クロアチア」より)。これは、クロアチアの中世美術の傑作だといわれている。
ウィキペディア・フリー百科事典(巨匠ラドヴァン [Radovan(master) : 英語版])
http://en.wikipedia.org/wiki/Radovan_(master)
教会の中に入ると、正面に天蓋付きの「主祭壇」がある(写真)。四隅の柱に支えられ、八角形の二重屋根を被り、天蓋の上には受胎告知を表すゴシック像が立っている。彫刻家「マヴァル」の作品で、1331年頃に造られたものだ。
主祭壇の両脇には「聖歌席」が並んでおり、その手前左側には「説教壇」が見える。
「聖歌席」(写真)はクルミの木で出来ており、豪華な彫刻が施されている。木彫師「イヴァン・ブディスラヴィチ」の作品だ。上下に列の座席が設けられており、上席は参事会員席、下席は聖職者席である。
「説教壇」(写真)は、14世紀初めに造られたもので、イタリア・ピサの工匠作だが、名前は分からないとの事。多色大理石の八角周壁に囲まれ、八本の大理石柱によって支えられている。
「説教壇」の奥に目をやると、新礼拝所である「イヴァン礼拝所」(写真左)がある。この礼拝堂は、ダルマチア初期ルネッサンスの代表作と言われており、「聖ロヴロ大聖堂」の中で最も有名だ。正面には、初代トロギール司教であった町の守護聖人「イヴァン・ウルスィニ」の石棺が置かれている(写真右)。
正面上部のルネットには、「ニコラ・フィレンティナツ」作、浅浮彫の「聖マリアの戴冠」が見られる(写真左)。見上げると、格子天井になっており、四角い枠の中には「熾天使(してんし)」の浮き彫りが続く(写真中)。中央から顔を出しているのは「父なる神」である(写真右)。
ウィキペディア・フリー百科事典(ルネット)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88
ウィキペディア・フリー百科事典(熾天使)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%BE%E5%A4%A9%E4%BD%BF
北側廊の東の端には、「聖十字架祭壇」がある。ここにはヴェネツィアの彫刻家「レオナルド・テデスコ」作、「木の磔刑像」が見られる(写真左)。「聖ロヴロ大聖堂」には、「宝物室」(聖具保管室)もある。ここには教会が所有する数々の聖具や宗教美術品が展示されている(写真右)。
続いて「鐘楼」に昇ることにした。鐘楼を上る階段は、教会の外にある(写真左)。狭い石の階段を上るとバルコニーに出た(写真中)。ここから更に石の階段を上ると、途中から鉄製の階段に代わる。鐘の近くまで来ると、怖いぐらい急な階段になる(写真右)。これを上ると、鐘楼の最上階だ。
鐘も手で届く高さにある(写真左)。頑張って昇っただけのことはあり、ここからの見晴らしは素晴らしい(写真右・下左)。お天気が良かったので、すべてが美しく輝いている。これまでのところ、今回の旅は天候に恵まれている。
南側の下を見ると、「時計塔」と「ロッジア」が建っている(写真下右)。「ロッジア」を見ると、ツアーメンバーが揃っていた。丁度ガイドの説明を受けているところのようだ。北側には、本土の街が見える。青空に赤い屋根、緑の山々にブルーの海、降り注ぐ太陽の光。とにかくどの方角を見ても感動の連続である。約15分の短い時間ではあったが、十分に「トロギール」の景色を楽しむことができた。
鐘楼を降りて「大聖堂」を出た後は、その向かい側に建つ「ロッジア」と「時計塔」を訪れた。「ロッジア」(写真)は、ローマ風の柱廊に囲まれ、屋根の付いたバルコニーのような建物(涼み廊下)のことで、アドリア海の沿岸の街では多いようだ。「町の中心広場に建てられていることが多く、使い方は町によって違うものの裁判所、税関などのほかに集会場としても使われた」(「旅名人ブックス クロアチア」より)。
この「ロッジア」の正面の壁には、騎馬像のレリーフが彫られている(写真左)。トロギール出身で、祖国を守るためにオスマントルコと戦い、1520年に戦死した郷土の英雄「ベリスラヴィッチ総督」の像だ。彫刻家「イヴァン・メシュトロヴィッチ」の作品である。壁の左手にもいくつかのレリーフがある。その中央上部には、天秤を持って正義を計る像が見られる(写真右)。これは、「このロッジアはかつて裁判所として使われたため、その象徴となるテーマがレリーフとして施されたのであろう」(前掲書より)との事。こちらは、「ニコラ・フィレンティナッツ」の作品だ。
ところで、この「ロッジア」にもたくさんの子供達がいた。彼らも夏休み最後の日を楽しんでいるのだ。しかし彼らはどのようにして集まったグループなのだろうか?
引率者はいるのだろうか? 今考えると不思議だ。現地で彼らに訊ねてみれば良かったのだが、今となってはもう遅い。
ウィキペディア・フリー百科事典(ロッジア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B8%E3%82%A2
次は「チオヴォ島」だ。「チヴォ橋」(写真)を渡り、対岸から「トロギール」の旧市街全体を眺めるためである。橋は50mほどしかないのだが、橋の真ん中辺りに来ると、車が通るたびに橋は上下に大きく揺れるのだ。橋が落ちてしまうのではないかと思い、急ぎ足で渡る。
お天気が良く、海の青さも増しており、太陽の光を反射して白く輝く「トロギール」の街は、何とも言えない良い雰囲気を見せている(写真上)。ここから眺めると、確かに街全体が城壁で囲まれていたのだということが分かる。少し西に移動すると、正面に「南門」(写真下左)が見える。その先には、「ドミニコ会修道院」(写真下中)や「カメルレンゴの砦」(写真下右)も建っている。
しばらく眺めを楽しんだ後、再び「トロギール」の街に戻る。今度は、先ほど「チオヴォ島」から見ていた海沿いの通りを歩いてみた(写真)。
100mほど西に進むと、「南門」(写真)だ。「北の門」が「陸の門」と呼ばれていたのに対し、こちらは「海の門」とも呼ばれている。ヴェネチア船などが寄港すると、「南門」をくぐって街に入っていったのであろう。
この門のそばにも「ロッジア」(写真)がある。ここはかつて税関として使われていたという。寄港した船の通関手続きをしたのであろう。ちなみに、現在はジュエリーなどを売るお店になっている。
次は「ドミニコ会修道院」(写真左)である。海沿いの道を西に進み、ネオゴシック様式で建てられた小学校(写真中)の前を通り過ぎると、修道院が見えた。修道院の教会の前には、トロギール生まれでザグレブの司教である「オーガスティン・カゾティク」の像が立っている(写真右)。残念ながら修道院の教会の扉は閉まっており、内部を見ることはできなかった。
ウィキペディア・フリー百科事典(オーガスティン・カゾティク[Augustin Kazotic : 英語版])
http://en.wikipedia.org/wiki/Augustin_Ka%C5%BEoti%C4%87
その後さらに西に進むと、「カメルレンゴ要塞」(写真)だ。先ほど対岸からも見えた、旧市街の西の端に位置する。「15世紀、ヴェネツィア人によってそれまであった塔を改築して建てられたもの。1420年に始まるヴエネツィアのダルマチア支配に対して、トロギールの市民はしばしば反乱を起こしており、ヴエネツィア人にとってこの砦は外敵からだけでなく、市民から身を守ることも目的とされていた」(「地球の歩き方 クロアチア・スロヴェニア ‘08~’09」より)との事。
時計を見ると、午後2:20。集合時間までまだ40分ほどあったので、この要塞の展望塔へ上ることにした(写真)。入場料は20クーナだ。ノンビリしているだけの時間は無かったので、狭く急な階段を駆け上っていると、前をゆっくり歩く男性がいたので、声をかけて横を通らせてもらった。すると彼は、「どうしてそんなに急ぐのか?」と問いかけて来たので、「時間がないから・・・」と応えて先を急いだ。
先ほど「聖ロヴロ大聖堂」の塔に昇って「トロギール」の街を眺めたが、海のそばに建つ要塞の展望塔から見た景色は、また少し違った感じだ(写真)。「チォヴォ島」の丘の周りに赤い屋根の家が並び、その上には青い空、手前にはブルーの海、そしてヨットハーバーには白いヨツトが何隻も係留されている。お天気に恵まれたことで、最高の景色を楽しめたのではないだろうか。ちなみに、東側には先ほど訪ねた「聖ロヴロ大聖堂」が、また北側には「聖マルコの砦」が見える。
ウィキペディア・フリー百科事典(カメルレンゴの要塞 [Kamerlengo Castle : 英語版])
http://en.wikipedia.org/wiki/Kamerlengo_Castle
10分ほどの短い時間ではあったが、十分に楽しむことができた。ここから北側に進み、「聖マルコの塔」(写真)を見た後、集合場所である「北門」に向かうことにした。「聖マルコの塔」へは150mほど歩くと到着。階段はあるが、鍵がかかっており、上まで昇ることはできない。この塔は、「ヴェネチアが支配した時代に、オスマントルコ帝国の攻撃に備え建てられたもので、カメルレンゴ要塞は海の側の、聖マルコの塔は陸の守りとして使われた」(「旅名人ブックス クロアチア」より)との事。
「聖マルコの塔」を離れ、運河沿いに「北門」へと続く公園の中を歩いて東に向かった。200mほど進むと、運河に架かるアーチが見えた(写真)。この橋を渡ると、「旧市街」を訪れる車のために用意されたパーキングがあるのだ。我々がバスを降りた場所は、長距離バスのターミナルなので、長時間バスを止めておくことはできない。「北門」に近かったので、バスは我々をターミナルで降ろした後、このパーキングまで移動しているのであろう。
この橋のトップから見る運河の眺めもなかなか良い(写真)。日本は海に囲まれた国なのに、意外にヨットハーバーなどは少ない。漁業や港湾のための設備にはお金が架けられているが、レジャーにはお金がかけられていないように思える。漁業権などが邪魔をしているのであろうが、いわゆるバブルの時代にもっと整備されていれば、日本人も老後の楽しみが増えていたのではないだろうか。
さらに東へ100mほど進んだところで、再び旧市街に入る。路地を歩いていると、貝を並べた子供のお店屋さんがあった(写真)。本当に売っているのか、遊びなのかは分からなかったが、写真を撮らせてもらう。さらに路地を50~60m歩くと、「北門」の前に出た。ツアーメンバーも数人集まっている。全員が集まるまでの間、門の周囲の写真を撮る。
全員が集まったところで、バスを降りた「長距離バスターミナル」に向かう。午後3:00、バスに乗車し、次の目的地である「スプリット」へ出発した。
ウィキペディア・フリー百科事典(トロギル)
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(参考文献)
・「地球の歩き方 クロアチア・スロヴェニア ‘08~’09」(地球の歩き方編集室)[ダイヤモンド・ビッグ社]
・「旅名人ブックス クロアチア」(旅名人編集室編)[日経BP社]
・「週刊世界遺産 ドゥブロヴニクの旧市街」(菅家洋也編)[講談社]
・「トロギル大聖堂(日本語版)」(Ana Ivelja-Dalmatin他編)[Turisticka naklada d.o.o. Zagreb刊]





































































































































































































































































































































































































































































































