June 08, 2007

ルーブル建ロシア産原油先物取引所

ルーブル建ロシア産原油先物取引所

6月7日付の日経新聞によると、「ロシア政府は8月にもサンクトペテルブルクにロシア産原油の先物取引所を開設する方針を決めた。国際的な原油価格の形成で主導権を握る狙い。取引はルーブル建てとしており、原油取引の「基軸通貨」であるドルの相場にも長期的に影響を与える可能性がある」とのこと。この記事を読んで思い出したのが、2000年11月に原油取引を米ドル建てからユーロ建てに切り替えたイラクだ。イランやベネズエラもこれに続いた。原油取引をユーロ建てに切り替えたことが、現在も続く米軍のイラク攻撃の本当の理由だとも言われている。

それでは、何故ユーロ建ての取引が行われると米国にとって不都合なのか。それは米国が、米ドルの資金循環システムを維持できなくなるからである。ご存知のとおり米国は、恒常的な経常赤字と財政赤字といういわゆる双子の赤字を抱えているが、原油取引は米ドル建てなので、米ドルを印刷するだけで原油の調達ができる。また原油の取引が米ドル建てに限られている限り、他の原油輸入国も米ドルを必要とする。結果、米ドルを調達するため、財貨やサービスを米国へ輸出する。そして手にした米ドルで原油を購入、余剰資金は米国市場に投資され米国に還流する。原油輸出国が受け取った米ドルも米国に向かう。単純に言えば、これが米国経済を支えるマネーの循環システムなのだ。しかし原油取引がユーロなど他の通貨建てで行われるようになると、米国は他国の通貨を手当てする必要が生じる上、他の原油輸入国の米ドルに対する需要も下がってしまう。これでは米ドルの暴落と、米ドルの循環システムの崩壊に繋がりかねない。

ところで、何故米ドルが基軸通貨とされたのか。それは第二次世界大戦後、米国が圧倒的な経済力と金の準備高を持っていたからである。この米ドルを基軸とし、金1オンス=35ドルで兌換する金ドル本位制がいわゆるスミソニアン体制だ。しかし、その後日本やドイツなどが戦後復興を遂げて米国に経済力で迫ってきたこと、またベトナム戦争で浪費を続け資金的余裕がなくなってきたことから、1971年、米国はドルの金兌換を停止、かつ変動相場制を採用した。円・ドルで見ると、1971年の固定相場制のときは1ドル=360円であったが、現在は1ドル=120円程度と約三分の一に減価している。しかし、米国が抱えるいわゆる双子の赤字のことを考えると、まだまだ米ドルの価値は高いように思える。この高い価値を支えているのが、先程から見てきた原油の米ドル建て取引と米ドルの循環システムなのだ(相対的な高金利などはシステムの一要因と考える)。

さて、今回開設の方針が決められたルーブル建ロシア産原油先物取引所。記事にもあるように、今後米ドルにどのような影響を及ぼすのであろうか。ソビエト崩壊直後のロシアは、経済的に苦しい立場にあったが、エネルギー価格の高騰のおかげで一気に息を吹き返した。資源大国としての影響力を行使することで、さらに経済的覇権を得ようと目論んでいるのか。ロシアが戦略的にエネルギー資源を使う上で、今回のルーブル建ロシア産原油先物取引所は重要な役割を果たすであろう。米国が国内金融マーケットを充実させ、資金循環のシステムを作ったように、ルーブルも循環させる仕組みが必要だからだ。ロシアの計画に対して、米国はどのような対応を取るのだろうか。イラクの時のように爆撃することもできないし、為替による大幅な調整も避けたいところだろう。しかし、仮にロシア産の原油だけに留まらず、他の産油国の原油にまでルーブル建て取引が広がるのであれば、米国も黙ってはいられないだろう。ロシアは虎の尾を踏むようなことをするのだろうか。最近の米国の振る舞いに対するお灸程度で済めば良いのだが。米国・ロシアの動向と金融マーケットを注視する必要がありそうだ。

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March 21, 2007

BRIC’s、VISTA、ネクスト・イレブンへの投資は

BRIC’s、VISTA、ネクスト・イレブンへの投資は

先週末、保有していた投資信託のほとんどを売却した。売却した投信は、「インド株投信」、「新興国成長株投信」、「アジア債券投信」、「アジア好配当株投信」、「コモディティ投信」、「ロシア・欧州新興国」、「東欧投資ファンド」などである。これらは、いわゆるBRIC’s投資を中心にした投資信託で、インド株投信のように投資額の2倍以上になったものもあり、総じて良好なパフォーマンスであった。これらBRIC’sやこれに続くVISTA、ネクスト・イレブンと呼ばれる国々についても、今後の成長がまだまだ期待できる。では何故これらの国々の株式を対称にした投信を売却したのかというと、2月下旬から今月初めにかけて生じた世界同時株安の動きを見て、もう一度投資先の見直しをした方が良いと思ったからである。

今回の世界同時株安は、上海株式市場の暴落を機に、アメリカのサブプライムローン問題がクローズアップされ、米国の個人消費が後退して景気の減速懸念が出てきたからと言われている。そして株安の連鎖は、「円キャリートレード」の巻き返しによる円高→輸出企業の採算悪化→業績の下方修正→株式の売却といった株安の連鎖を引起した。私の資産ポートフォリオを見ると、地域や金融商品、通貨などの分散を図っていたにもかかわらず、すべてが同程度の打撃を受け、分散効果は殆んど出なかった。その理由として、外貨資産の比率が高く、外国株へ投資する投資信託もすべて為替のヘッジなしであったことを挙げることが出来る。しかし、もしすべてにヘッジを掛けていたとしても、成長性は高いがマーケットの規模が小さく、ボラティリティの高い市場の場合は、今回のように一斉に資金が引き揚げられてしまうので、国別分散の効き目が殆んど期待出来ないように思えた。

もちろん分散投資の意義を否定するつもりはない。もう一度じっくり考えたいのは、BRIC’sやそれに続く国々への投資スタンスである。成長市場として注目されてお金がこの市場に集まると、マーケットが小さいほど加速度的に株価は上昇する。逆に何かリスクが表面化すると資金が逃げ始め、アッという間に暴落してしまうのである。このことをよく考えないと、投資資金が簡単に五分の一、十分の一になってしまう可能性がある。先行しているBRIC’sの国をみても、ブラジルの株式時価総額は約80兆円(市場規模の計算は今年3月1日現在、以下同じ)、ロシアは約120兆円、インドが95兆円、中国でも本土は130兆円程度に過ぎず(歴史ある香港の市場は250兆円程度ある)、日本の株式時価総額約550兆円と比べると、これらの市場規模はまだまだ小さい。ましてBRIC’sに続く国々の市場規模は更に小さいので、よりリスクへの注意が必要になる。いま注目されているベトナムへの投資も、安易に行うべきではないであろう。ベトナムの時価総額はたった2兆円なのだ。資金の流入が続いているうちは良いが、一旦逆回転が始まると、逃げ遅れて大損する可能性も高い。ちなみに他の新興国の時価総額を見ても、南アフリカが約45兆円、トルコは約20兆円、アルゼンチンは約6兆円と非常に小さな規模である。

ところで、現在注意を払わなければならないのが円キャリートレードの元になる日本の「低金利」と原油高により潤った「オイルマネー」、そして世界経済の牽引車であるアメリカの景気、その中でも比重の高い「個人消費」である。これらのどれか一つにでも変調が起きると、株、為替、債券のすべてに影響が現れる。かつてのように、資金移動の自由がなかった時代の理屈は通用しない。これが人・物・金・情報の自由化されたボーダレスワールドなのだ。新興国市場の成長による収益機会は逃したくない一方、過大なリスクも負いたくはない。どのようにポートフォリオを組み替えるべきか、まだ自分自身の考えはまとまっていない。暫くキャッシュポジションの状態で色々と考えることにした。
なお、アメリカによるイラン攻撃の可能性についても心配していることを付け加えておく。

(用語解説)
① BRIC’s →ブラジル、ロシア、インド、チャイナ(中国)
②VISTA →ベトナム、インドネシア、サウス(南)アフリカ、トルコ、アルゼンチン
③ネクスト・イレブン(11) →イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、バングラディッシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、メキシコ
④「サブプライムローン」→信用力の低い人(破産経験者や差し押さえされた者など)を対象にした住宅ローン。借入の審査が基準は緩いが、金利は高い。優遇金利を指す「プライム」より信用力が低いため「サブプライム」と呼ばれている。
⑤「円キャリートレード」→「円借り取引」とも呼ばれており、低金利の円を借りて高金利通貨に替えて運用する手法のこと。

(ご参考)
ホーチミン市証券取引センター(HSTC)のHP
http://www.vse.org.vn/
ムンバイ証券取引所(BSE)のHP
http://www.bseindia.com/
ロシア取引所システム(RTS)のHP
http://www.rts.ru/?tid=541
ヨハネスブルク証券取引所(JSE)のHP
http://www.jse.co.za/
海外株価案内のHP
http://www.traders.co.jp/stocks_info/kaigai_stocks/global/summary.asp

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July 13, 2006

成長を続けるロシア経済の盲点は?

成長を続けるロシア経済の盲点は?

今週はロシア特集の雑誌が数冊発行されている。サンクトペテルブルグで開催されるサミットを意識してのことだ。先日サンクトペテルブルグに行った時、街中工事で交通渋滞していたことを思い出した。サミットに向けて整備していたのだ。この街は、エルミタージュ美術館をはじめ歴史的建造物が並び、落ち着いた雰囲気を持っている。しかし街を走る古く汚れた車は、私にマイナスの印象を与えた。

ところで、最近のロシア経済は順調に伸びているようだ。原油価格の高騰により、輸出およびエネルギー関連の設備投資が増え、雇用者所得のアップで個人消費も活発なためだ。しかし、エネルギー関連以外の製造業の育成が不十分な点、個人ローン残高が急増している点、企業が再国有化されている点など、懸念材料も多々ある。更に詳しく見てみよう。

ロシアの原油の輸出量は世界第2位で、天然ガスの輸出量は世界最大。原油価格の高騰を追い風に、1998年には1,420億ドルの対外債務を負っていたが、現在は金・外貨準備高2,370億ドル(世界第4位)を誇る。そして多くの産油国とは違い、ロシアでは一握りの指導者層だけでなく、一般市民もオイルマネーで潤っているようだ。

ロシア人の全国平均所得は、2000年に月額2,281ルーブル(約9,000円)だったのが、2006年3月末には(約36,000円)と4倍に、特にモスクワ市民の平均は2000年の7,998ルーブル(約32,000円)が、2006年3月末には28,038ルーブル(112,000円)に上昇している。(ロシア国家統計委員会)
また、相次ぐ外資系企業の進出のため、ロシアでは英語を話せる人材が不足していることから、外資系企業が英語を話せる人材を雇う場合、月額2,000~3,000ドル(約22万円~33万円)支払う必要がある。更に経験を積んだ管理職クラスを採用しようと思えば、月額5,000~10,000ドル(約55万円~110万円)でも難しいようだ。こうした人々が新しい中産階級「ニューリッチ層」を形成し、旺盛な消費を支えているのだ。

消費市場を見ると、2005年には3,600億ドルに達し、2002年に比べて2倍の規模になった。(アトン・キャピタルグループ調査)
個別では、ロシアでの外国車(輸入車と外国メーカーがロシアで生産する車)の新車販売台数は、2003年が前年比2倍の22万台。2004年は同86%増の41万台、2005年は同49%増の61万台と爆発的な勢いで増え続けている。また米国ゼネラル・モーターズの調査によると、2001年にロシアで車を購入した人の77%が6,000ドル(約66万円)以下の車を買っていたが、2005年には6,000ドル以上の車を買う人が76%と逆転し、特に15,000ドル(約165万円)以上の車を買う人が20%にまで増えている。
その他、携帯電話が5年前の300万台から800万台に激増し、飽和状態に近くなるなど、エレクトロニクス製品も好調である。

このように好調裡に推移している個人消費だが、個人所得の増加だけが個人消費を支える要因ではない。”信販ローン”や”個人向けローン”の普及も大きい。ロシア中央銀行によると、2005年1月に銀行融資の中で企業向け融資は75.4%、個人向け融資は14.6%であったが、2006年4月現在企業向け融資が68.6%に対して、個人向け融資は20.2%と個人向けの構成比が大きく上昇している。ロシア大手のアルファ銀行によると、リテールバンキング市場は2005年に410億ドルだが、2010年までには1,120億ドルにまで伸びると予測する。また、ロシアの調査会社ロミール・モニタリングによると、この1年間モスクワ市民の四分の一が信販ローンを利用して耐久消費財を購入していると言う。購入した商品の1位は冷蔵庫・洗濯機などの家電(56%)、2位はビデオ機器(18%)、3位は携帯電話(16%)である。

しかしローンについては懸念の声も出ているようだ。ロシアの調査会社ロミール・モニタリングによると、モスクワ市民の債務者の11%は、収入の半分程度をローンの返済に充てているという。また全ロシア世論調査センターのデーターでは、銀行側の消費者向けローン(信販ローンを含む)の延滞の割合は、2004年第1四半期は7%であったが、2005年第1四半期は11%、2006年第1四半期は18%と急増している。このまま増え続けると、やがては銀行の不良債権問題に繋がりかねないのだ。

好調な個人消費の裏で、懸念されることはローン問題だけではない。消費される製品の多くが輸入品という点にも留意が必要だ。原油高騰の恩恵は一般市民にも及んでいるのは確かだが、一方消費される製品のほとんどを輸入で賄うため、製造業は衰退して失業者も増えつつあるようだ。つまり国家経済を資源輸出に依存し、富を消費して投資に回さず、利益は国外に流れてしまうという現在の体質では、石油価格下落とともに経済も破綻してしまう可能性は否定出来ないのである。

懸念材料としてはもう一つ大きなものがある。それは企業の再国営化である。1990年代にエリツィン大統領の下、数多くの企業が民営化された。ソビエト連邦崩壊後の混乱期であったため、民営化に乗じて財を成し政治力を手に入れた”オリガルヒ”(注)が多数誕生した。しかし現在はプーチンの腹心を中心とした新”オリガルヒ”が誕生している。”オリガルヒ”達を潰し、民営化した企業を再度国営化して国営企業の経営権を抑えることで財と政治力を持つ。つまり国営化で財を成したプーチン派が、その財と地位を守るためプーチン政権を支持することでその保護を受けるという構図だ。これでは企業本来の役割を果たすことは出来ない。社会主義時代に逆戻りだ。
原油・天然ガスなどのエネルギー価格高騰で栄えるロシア経済。BRIC’sの一つとして投資先としての人気も高いロシア。今後も注意深くウォッチし続ける必要がありそうだ。

(注)「オリガルヒ」とは、ロシアの資本主義化の過程で形成された政治的影響力を有する”寡頭資本家”のことを言う。

(引用した今週発売の雑誌)
・週間エコノミスト 7/18「初のサミット開催とエネルギー・バブル大解剖ロシア経済」(毎日新聞社刊)
・Newsweek日本版7.12「石油マネーで復活・世界を揺さぶるロシアパワー」(阪急コミュニケーションズ刊)
・COURRIER Japon 7.20「蘇るロシア・巨大オイルマネーと”ロシアのホリエモン”」(講談社刊)

*雑誌から引用した部分も多いが、その都度引用雑誌名を挙げていないのでご容赦願いたい。

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March 13, 2006

インド株への投資について考える

インド株への投資について考える

取引銀行から、インド株投資セミナーの案内をもらったので参加した。銀行も証券仲介業が出来るようになったので、店頭販売の投資信託だけでなく、系列の証券会社販売の投資信託の仲介にも熱心だ。セミナーの講師は「フィデリティ・ワールド・ファンズ・インド・フォーカス・ファンド」を運用するフィデリティ・インターナショナルの方である。
最近は、インド株に関する書籍類も数多く出版されるようになり、情報収集もし易くなったが、直近の情報を仕入れるには、今回のようなセミナーに出席するのも良いと思う。

インド株への投資は3年程前から話題になり、株価はこの1~2年で2.5倍程度アップした。私も既に取引証券会社を通じて、インド株に投資する投資信託を2本持っているが、昨年の前半に設定されたファンドは約1.8倍に、昨年後半に設定されたもう1本のファンドも1.5倍程度に上昇している。私にとっては、これから投資するというよりも、むしろ利益を確定した方が良いのか否か心配する状況下でのセミナー出席となった。

セミナーの概要は次の通り。
Ⅰ. インドの強み
① 規制緩和
1991年に深刻な経済危機に見舞われた後、この危機を克服するため新経済政策を実施し、民間企業主導の経済へと変貌を遂げた。新経済政策後の経済成長をもたらした主因は、農業からサービス業への構造変化である。特にIT・ソフトウェア産業の成長は著しい。理数系に強く、英語が話せる人材が多く、しかも低賃金、そして24時間サービスを可能にする米国との時差などが成長を後押しした。

② 国際競争力
①で見たIT・ソフトウェア産業だけでなく、製薬業も国際競争力を持っている。特に外国で特許の切れた製品、いわゆるジェネリック医薬品を安く生産し、輸出できるからだ。IT・ソフトウェア産業同様、優秀で低コストの人材が豊富なインドは、アウトソーシング先として最適なのである。
  その他、自動車産業も盛んで、日本のスズキ自動車なども進出している。現在は、国内向けの小型車が中心だが、国内市場拡大と共に、輸出の生産基地的存在になることが期待できる。

③ 労働力
これまで見てきたように、インドには安くて優秀な若年労働力が多い。また、日米欧はもちろん、中国(一人っ子政策の影響が出る)よりも高齢者への依存度が低い点で魅力がある。さらに人口の三分の一が15歳未満であることを考えると、将来も期待できる。
  このような優秀な労働力を求め、外国企業は多数進出している。

④ 国内消費
人口約10億のうち、2億程度の中流階級が国内消費を牽引しているが、所得の比較的高いサービス・セクターの就業人口の増加に伴い、中流階級人口の更なる増加が見込めることから、内需拡大の余地は大きく、今後も消費が経済成長をもたらす可能性が高い。
都会に住み、所得が増えることにより、ライフスタイルも変化し、様々な需要が生まれてくる。中でも小売、自動車、レジャー、メディア、教育などに注目できる。

Ⅱ. リスク要因
このように、インドは投資先国として非常に魅力ある国であるが、最後にリスク要因として3点を指摘していた。

① 政治情勢
② モンスーンが農業に与える影響
③ パキスタンとの関係

セミナーの内容は、最近目にする資料やデータを越えるものではなかったが、約1時間楽しく聞くことが出来た。

ところで、インドに限らず新興国への投資を考える際、いつも悩む点があるので質問してみたが、同様の懸念は持っているとのことで、明確な答えは得られなかった。質問は、外国資本に頼って成長してきた国から、資本が一斉に引き上げられる可能性についてである。1990年代後半、タイ、インドネシア、韓国などで起きたアジア通貨危機、アルゼンチン、ブラジルでの金融危機、また2000年以降、ロシアでも危機が生じている。インドも同様のことが起こる可能性は無いのかという点が気になる。インドが本当に為替を変動させ始めた時(現在も変動性を採っているが、介入により変動幅は小さく抑えられている)は要注意だと思うのだが、未だに自分なりの回答は見出せていない。

なお、今回セミナーの内容を紹介したが、今回紹介のファンドを推薦しているわけではない。もし購入を検討する場合は、資料などを取り寄せ、自分で十分に研究して、自己責任での投資ということをお忘れなく。

「フィデリティ・ワールド・ファンズ・インド・フォーカス・ファンド」のHP
http://www.fidelity.jp/fwfindia/

インド株投資については次の投稿もご参照下さい。
平成17年6月10日付投稿 「インド株・中国株への投資は?」
平成17年6月11日付投稿 「インド株投資の前に知っておこう!」
平成17年5月28日付投稿 「インドのIT企業株はいかが?」
平成17年1月11日付投稿 「インド人もビックリ! この成長」

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February 09, 2006

ロシア株への投資を考える

ロシア株への投資を考える

取引証券会社から「DWSロシア・欧州新興国株投信」の案内を受けた。分散投資のため、インド、中国、その他アジア諸国の株式に投資する投信や、欧州新興国の債券に投資する投信は保有しているが、近年流行の「BRICs」のうち、ロシアやブラジルへ投資する商品は持っていなかったので、今回は前向きに検討した。

案内を受けた商品は、ロシア、トルコを中心に、ポーランド、ハンガリー、チェコなどの欧州新興国の株式に投資するものだ。石油や天然ガス資源に恵まれ、エネルギー価格高騰の恩恵を受け、経済が急成長するロシア。西欧市場に対する立地の良さ、高い教育水準、低賃金を武器に、西欧の工場・バックオフィスとして成長する中欧の新興諸国。ピラミッド型の人口構成で国内市場の成長が期待でき、EU加盟も狙うトルコ。どの国も投資魅力に溢れている。

しかしメリットばかりではない。ロシアは1998年に金融危機を起こしている。通貨ルーブルを実質的に切り下げ、対外債務支払いの猶予を求めるなど、経済は劣悪な状態であった。そしてこの危機はラテンアメリカを襲い、グローバル資本主義の本丸であるニューヨークをも直撃したことは記憶に新しい。トルコも2000年と2001年に金融危機が起きている。経常赤字を埋め合わせていた外国からの短期資金が大量に引き上げられたためである。これら危機の再燃は無いのだろうか。

その他にも不安要素を挙げれば多数ある。ロシアについては、エネルギー価格が下落した場合の経済に及ぼす影響や、ウクライナ、グルジアなど旧ソ連邦国家との関係、ユコスの実質国営化に見られるプーチン政権の政治手法など、分からない事が多い。またロシアの株価を見ると、1995年を100とした場合、2005年末には1,251と既に十倍以上に上昇していることから、これから投資してもメリットがあるのか迷ってしまう。
さらに、新興国市場は先進諸国に比べマーケット規模が非常に小さいため(注)、流動性が低く、価格の変動性も高い。ライブドア株ではないが、売りたくても売れない状況が続くこともありえるのだ。

今回案内を受けた投信は、成長期待の高い市場に投資するので魅力的である一方、非常に危険な、リスクの高い投資であることを充分に肝に銘じる必要がある。世界経済全般に注意を払い、危険な兆候を感じたら、即座に撤退することも視野に入れておかなければならない。これらのことを充分に検討し、納得した上であれば、今回案内を受けた商品を購入するのも面白いのではないかと考えている。

(注) 株式の時価総額
2006年初 日本 : 約550兆円 ロシア : 約65兆円 トルコ : 約20兆円 ポーランド : 約12兆円 チェコ : 約5兆円 ハンガリー : 約4兆円

なお、ポーランド・チェコ・ハンガリーなど中・東欧投資については、
2005年6月19日付投稿「中・東欧株式への投信も設定されるが・・・」
同月18日付投稿「中・東欧は拡大EU攻略のポイント」
同月4日付投稿「オランダも反対、中・東欧への投資は?」
同月1日付投稿「”EUの歩み”を振り返る」
同年5月30日付投稿「新たな分散投資先としての中・東欧」
などもご参照願いたい。

DWSロシア・欧州新興国株投信のHP
http://www.nomura.co.jp/retail/fund/newfund/pdf/299o.pdf

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January 02, 2006

どうなるウクライナとロシアの関係

どうなるウクライナとロシアの関係

今朝のNHKの報道で、今月1日からロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムはウクライナ国内向けの天然ガス供給を停止したとのニュースを伝えていた。

ウクライナが親欧米派となったことを機に、ロシアはガス価格の優遇措置を廃止し、現行の千立方メートル当たり50ドルから5倍近い230ドルへの値上げを要求、合意できなければ一月から供給を停止するとしていた。一方ウクライナは段階的引き上げを主張し、対立が深まっていた。

プーチン大統領は交渉期限の昨年三十一日、今年四月からの満額値上げを条件に一―三月は価格を据え置くとの妥協案も示していた。ウクライナでは国内の親ロ派財閥の投資抑制などで昨年の経済成長率は一二%から三%弱に急減速、景気てこ入れが急務となっていたため、ユーシェンコ政権は対ロ接近の姿勢も見せており、妥協するとの見方もあった。しかしウクライナはこの妥協案には乗らなかった。

EU加盟を視野に入れた親欧米派のウクライナに対するガス価格の優遇措置廃止は、同国にロシア主導の統一経済圏構想への参加を迫る事実上の最後通牒(つうちょう)であっただけに、今後のロシア、ウクライナ双方の動きに注意を払いたい。

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August 04, 2005

「ゴルディロックス・エコノミー(Goldilocks Economy)」と「IBSAC (イブサック)」

最近気になる言葉

新聞やテレビの報道を見ていると、次々に新しい用語が出てくる。欧米では随分前から使われていても、日本では最近になって頻繁に聞くようになったとか、また私自信に関心が無く、最近まで知らなかったという言葉もある。
そのような中で、最近気になっている2つを取り上げてみた。「ゴルディロックス・エコノミー(Goldilocks Economy)」と「IBSAC (イブサック)」である。
まず「ゴルディロックス・エコノミー(Goldilocks Economy)」であるが、これはインフレでもなく、景気後退でもない適度な経済状態のことを意味する。
最近の米国株式相場を見ると、順調に上昇し、景気の先行きが不安視された春頃とは随分異なっている。現在の米国経済は、昨年から引き上げられている金利が景気の足を引っ張ることも無く、また加熱感を生じさせることもない、まさに「インフレなき経済成長」が当てはまる状況である。最近の米国マーケット関係者は、このような経済状態を指して「ゴルディロックス・エコノミー」という言葉を頻繁に使うようだ。
「ゴルディロックス」というのは童話に出てくる少女の名前で、彼女が物語の中で、熱過ぎず冷め過ぎないスープにたどり着くことから、インフレを引き起こすほど景気に強さは無いが、失業が増えるほど弱くも無い状態を表すのに、彼女の名前が使われたのである。ある意味、理想の経済状態を表していると言っても過言ではない。
この言葉は最近出てきたものではなく、クリントン政権時代にも使われていたようだ。
次に、「IBSAC (イブサック)」であるが、これは近年,新興市場国として注目されているインド(India)・ブラジル(Brazil)・南アフリカ(South African Republic)・中国(China)の 4 ケ国を指して言う。2005年2月にロンドンで開催されたG7で始めて使われた新しい言葉である。新興市場国をあらわす「BRICs(ブリックス)」という言葉は聞き慣れていると思う。経済成長が著しいブラジル(Brazil)・ロシア(Russia)・インド(India)・中国(China)の 4 ケ国の総称で、アメリカの大手証券会社ゴールドマン-サックス社の経済レポートで初めて使われた造語である。
では何故「BRICs」という言葉が知れ渡っているにもかかわらず新たに「IBSAC (イブサック)」という言葉を持ち出したのであろうか。主に理由は2つあると思われる。
第一はロシアがブラジルやインド、中国と同列に「BRICs」と呼ばれることに抵抗感を示しているためである。ロシアはG8のメンバーであり、新興国グループではないというプライドがあるのだ。
第二に、7月に開催されたG8(グレンイーグルス・サミット)でのテーマの一つにアフリカ支援問題があったからである。かつてはアパルトヘイトなどの問題を抱えていた南アフリカ共和国であるが、議長国である英国と既に歴史的にも強いつながりを持ち、かつ資源にも恵まれた南アフリカ共和国と今後も更に結びつきを強めたかったため、同国を強くアピールし、G8各国に十分認知させるという意向もあったようである。

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July 22, 2005

バスケットの中には何が入っているの?

「通貨バスケット制」

TVで、芸能人のカバンや財布の中を見せてもらう番組を放送していた。事前に打ち合わせされているのだろうが、それでも「この人がこんな物を持っているの!」とか、「凄い大金を持ってる!!」などサプライズさせられる。
ところで、昨日中国は人民元の切り上げと共に、「通貨バスケット制」の採用を発表した。切り上げ幅は2%で、毎日の終値から±0.3%の範囲で変動させるというものであるが、「通貨バスケット制」については、どこの通貨を、どの割合で組み入れるかなど内容は不明である。未発表だと、事実上変動しないような通貨を組み入れているのではないかと疑いたくなる。(私の性格が悪いから疑ってしまうのか?)
前回の投稿でも述べたように、1972年頃中国では「通貨バスケット制」が採られていた。バスケットの中味は、主要国通貨のうち中国との貿易の比重の高い日米欧10カ国とマレーシア・リンギット、シンガポール・ドルの合計12カ国通貨であり、これらの通貨を貿易額によって加重平均し、前日の国際為替市場での相場をもとに中国人民元の対ドル相場を算出していたようである。当時の構成比はスイス・フラン、米ドル、ドイツ・マルクが各25%程度、日本円が17~18%程度と、主要4ヶ国で9割以上を占めていた。スイス・フランの割合が高かったのは、旧東側諸国との決済通貨がスイス・フランであったという事情によるものである。当時は中国への投資も自由な時代ではなく、現在の中国を取り巻く経済環境とは比較にならないが、中国の「通貨バスケット」を知る上で、参考にはなるかもしれない。
しかし、現在の中国は急成長しているとはいえ、中を見ると完全に斑模様となっている。沿岸部は成長を遂げ、十分豊かになっているが、内陸部の経済環境は更に厳しくなり、相変わらずの貧困が続いている。
社会主義的市場経済といわれ始まった改革だが、ピカピカの上場企業は僅かに過ぎず、国営企業と、そこへ融資する金融機関には不良債権問題が横たわり、解決は至難と思えるような状況である。外資の導入で繁栄を謳歌しているように見える中国だが、為替の変動相場制への移行は、一歩間違えば国家分断もありえる程の結果をもたらす。従って相場の変動を決める「通貨バスケット」の中味は重要である。他人のカバンの中を見たいと思う気持ち以上に今回の「通貨バスケット」の内訳が知りたい。
バスケットの中を覗くと、ドルペッグ制をとる国の通貨だけで構成されていたりして・・・・。


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中国人民元の実力は?

中国人民元切り上げ

中国が米ドルに対し人民元の為替レートを切り上げると発表した。併せて「通貨バスケット制」も取り入れると言う。
中国人民銀行(中央銀行)は、これまで人民元を米ドルとの間で為替レートを事実上固定していたが、今回対ドルで2%切り上げる。同時に事実上の固定相場制を改め、上下0.3%の範囲内で変動させる変動相場制に移行する。但し、対米ドルだけを基準に変動させるのではなく、円やユーロなどの通貨の動向も取り入れた「通貨バスケット制」を採る模様。バスケットにどの通貨がどのような割合で採用されるかは不明である。
ところで、「通貨バスケット制」は今回が初めてではない。いわゆるニクソン・ショック後の1972年から「通貨バスケット制」は続けられ、1994年より「管理変動通貨制」に一本化、1997年の香港返還とアジア通貨危機を機に「ドル・ペッグ制」(中国の中では「管理変動通貨制」が続いていたことになっている)へと移り変わってきた。
当時のバスケットの中味は毎年変更されてはいたものの、概ね米ドル、スイスフラン、ドイツマルクが各25%程度、円が17~18%程度であったようだ。
1972年から「通貨バスケット制」は続けられたと述べたが、実は1981年からは「二重相場制」が採られており、「通貨バスケット制」による公定の為替レートとは別に「貿易用の内部調整レート」が設けられていた。
人民元の対ドル平均相場を見ると、1973年頃は1.98元、1980年には1.49元、1982年の「貿易用の内部調整レート」は2.8元、1985年に3.8元と少しずつ切り下がってきた。1994年には内部調整レートと公定レートを統一し、「管理変動通貨制」を導入し、1ドル=8.7元とした。
そして、1997年の香港返還とアジア通貨危機を機に「ドル・ペッグ制」となり、1ドル=8.27元でほぼ固定され現在に至っている。
本日22日から中国元はこれまでより2%切り上げた水準である1ドル=8.11元となり、その後毎日の終値の上下0.3%の範囲で変動することになる。「通貨バスケット制」を採用するため、米ドルに対する為替の急激な変動は避けられるであろうが、バスケットの中でのドルの比率は高いものと思われるので、人民元とドルとの連動性が必然的に高くなるのは避けられない。
どの程度の為替水準まで中国人民元高が進むのかはわからないが、「マンデルの不可能な三角形」で考えると、固定為替相場を止めたことで、中国は「独立した金融政策運営」と「自由な国際資本移動」を手に入れたことになるが、中国国内の金融制度が十分に整っていないことや、国内経済格差の問題などを考えると、一方的に元高になるとも思えないのだが・・・・。
明日からの為替相場が楽しみである。
(参考)中国人民銀行のHP
http://www.pbc.gov.cn/

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July 20, 2005

中国海洋石油とユノカル

中国によるエネルギー資源の買い漁り?

「中国海洋石油(CNOOC)」と米石油「シェブロン」による米石油「ユノカル」の買収争いに注目している。
中国のなりふりかまわぬエネルギー資源確保への動きと、米国安全保障上の問題が議論の焦点である。”平和ボケ”した私には、心底理解できる問題ではない。マーケットで形成される価格により石油資源を輸入すれば良く、元を押さえる必要はないと思ってしまうのが”平和ボケ”の証拠か。
石油企業に対する買収が注目される背景には原油価格の高騰があるが、米石油メジャーは油田の新規開発投資には慎重で、既存石油企業の買収に傾いている。実際の生産開始時まで原油高が続くのか不透明なうえ、有望な油田の発見には費用や時間がかかるためである。最近の大規模な油田開発プロジェクトを見ると、鉱区が沖合にあるなど開発コストがかさむケースが多い。
しかし、石油メジャーが保有する石油・天然ガス鉱区の可採埋蔵量は軒並み減少しており、自社の埋蔵量を確実に増やすため、既に有力油田を持つ石油会社を買収する方向で動いている。原油価格の高騰で手元資金が豊富なことも、企業買収することを後押ししている。
「シェブロン」は「ユノカル」の買収を4月4日、正式に発表したのだが、「中国海洋石油(CNOOC)」は、買収価格を吊り上げて、割り込んできた。
「CNOOC」は、中国国内のエネルギー需要急増に対応するため、「ユノカル」の持つ東南アジアの油田、ガス田の獲得を狙っての参入である。「ユノカル」は中国に近接するアジア各国での鉱区開発に力を注いできたため、中国のニーズに丁度合致する。
中国では、自動車保有台数の増加や工業生産の拡大を背景に、中長期的には石油需要の拡大が見込まれる。「CNOOC」の買収提案は、米国のエネルギー安全保障にも深くかかわるため、米議会では中国の急速な台頭を経済・安全保障の両面から警戒する声が強い。
「CNOOC」による「ユノカル」の買収を差し止める法案が米下院で可決されており、米上院でも同様の法案が提出された。
米政府が買収を拒絶すれば、中国政府の反発が起きるのは必至、米産業界から、中国ビジネス全般への影響を懸念する声も出ているようだ。
中国による石油会社の買収は「ユノカル」だけではない。中国国有石油第二位の「中国石油化工(シノペック)」はカザフスタンに権益を持つカナダの石油会社、「ペトロカザフスタン」の買収を検討していると言う。 また、イラン、スーダン、ミャンマーなど米国が制裁対象とし、欧米メジャーが進出しにくい地域に対しても声をかけている。中国が石油に対する権益を確保し、影響力を高めようとするほど、米国との衝突は不可避となる。
しかし、本件を国と国の衝突と考えると事実を見誤る懸念もある。実は「CNOOC」を舞台裏で支えるのがアドバイザーのゴールドマンサックスとJPモルガンチェース、米政府とパイプのあるロビイストやメディア戦略の専門家などの買収チームである。米国にとって石油は政治的戦略商品である一方、米国民間企業にとっては莫大な儲けをもたらす「打出の小槌」でもある。このあたりが一層問題を複雑にしているように思う。

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